取り組んだ内容

【取組(1)】
Ⅰ.働き方・休み方改善
1 労働時間管理
夜勤・交代制勤務の勤務間隔を適切に管理している
【取組(2)】
Ⅰ.働き方・休み方改善
1 労働時間管理
夜勤専従者への配慮(夜勤の時間・回数の制限等)を行っている
【取組(3)】
Ⅰ.働き方・休み方改善
1 労働時間管理
年次有給休暇をはじめとする休暇の取得を促進している
【取組(4)】
Ⅰ.働き方・休み方改善
2 勤務負担軽減
正職員について多様な勤務形態(短時間勤務、短日勤務、交代制勤務、フレックスタイム制など)を活用している
【取組(5)】
Ⅰ.働き方・休み方改善
2 勤務負担軽減
チーム医療や多職種連携(業務分担・連携の強化等)により負担軽減を図っている

取り組みのきっかけ、背景、取り組み前の問題点

 WLBがとれないことで常勤看護職員が離職する状況を目の当たりにし、非常勤看護職員の採用が増加した。平成24年度の離職率が27.6%と上昇し、困り果て、中小規模病院ならではの看護部運営の難しさに直面した。中小規模病院の特徴として、①施設規模が小さい、②人数が少ない、③新卒が来ない、④スタッフの年齢層が高い、⑤離職率が高い、⑥管理者の責任が重いなどがあるが、中小規模病院だからこそできることがあると考えていた時に、日本看護協会の「看護職のワーク・ライフ・バランス推進ガイドブック」に目が留まった。ピンチをチャンスに変えるためにWLB推進事業へ参加し、知恵を絞って工夫することにした。

取り組み対象

  • 取り組み対象
    看護職
  • 取り組みの中心部署・人物
     理事長・院長に法人全体としての事業と公認を受け、看護部を中心に、事務部、リハビリテーション部で10名の推進チームをつくった。3名の医師がサポーターとして参加した。
  • 取り組み詳細
    1.定量的・定性的アプロ―チでの現状調査
    1)日本看護協会「ワーク・ライフ・バランス(WLB)インデックス調査」→「能力開発への支援を受けていると思う」が高い半面、「勤務先の将来に対し不安」を抱き、「長く勤めること」に難色を示していた。
    2)発想法を用いて仕事上の問題点について分析→マンパワー不足、自分の思う業務が遂行できない、継続教育を行う環境にないなどにより、キャリア開発に挑む人材に育っていないことがわかった。
    3)SWOT分析・クロス分析を用いて組織分析→改善戦略として、組織全体で系統立てた計画的人材育成があがった。
    4)看護職員ひとり一人のワークとライフの現状調査→仕事や家庭で多くの課題にチャレンジしているスタッフの姿、能力開発に余地が多くあるスタッフの姿などがわかった。
    2.プランニング
    1)ミッション:病院の理念である「患者さまや利用者さまの権利を尊重し、地域に密着した良質かつ適切な医療、介護、福祉サービスを提供する」
    2)ビジョン:WLBを実行して貞本病院を愛してやまない看護部を創る
    3)ゴール:①WLBをとりつつ計画的自己キャリア開発、②WLBをとりつつ計画的な働き方の実践、③業務内容の整理・人員配置・関連部署との連携、④組織が支援できる納涼開発の提案、⑤WLBの制度認知
    3.実施
    1)平成25年度は、チームづくりと現況分析を行い、報告会を開催し、WLBについて普及した。基盤づくりとして、「有給休暇取得率アップ」「育児短時間勤務への取組み」「介護休業取得推進」「急な休みに対応」「サービス残業をさせない」「働き方選択(日勤のみ・パートタイマー)」などを検討し、推進した。
    2)平成26年度は、看護管理者が看護職員ひとり一人と雇用形態・勤務形態・非常勤を選択する状況・常勤を続ける工夫・看護実践能力・キャリア開発予定・新たな業務に従事する提案などについて面談をした。その結果を年代・資格・勤務形態・勤務時間数・職務・仕事上の役割・来期のチャレンジ目標・生活者としての役割を一覧表にし、ライフステージと照合した。スタッフの能力開発を重視した人材マネジメント施策を戦略的に実践した。特に20歳代、30歳代は仕事も生活も自己成長する絶好に機会と捉えて、数年先の姿をイメージ化し、マネジャー育成を強化した。
    3)平成27年度は、前年度に引き続き人材マネジメント施策を行い、多能工化を推進し、さまざまな業務に従事するスタッフを増やした。夜勤時間を見直し、夜勤回数や夜勤の種類を個別に調整(深夜勤のみ、準夜勤のみ、夜勤専従、月3回程度の夜勤)した。逆循環の勤務を廃止し、正循環の交代を実施した。
    4)平成28年度は、多彩な勤務形態・勤務ステップを仕分け、パートタイマーのスモールステップアップに取り組んだ。はじめて育児短時間制度の利用があり、数名に増えた。月2回のペースで部長・師長・主任・副主任がミーティングを行い、スタッフひとり一人の強みに着目し、個々の才能など(タレント)を重視したキャリアアップに取り組んだ。
    5)平成29年度は、時間外勤務を分析し、業務整理を行い、部署間連携や外部委託などを検討し実施した。働き方として、常勤からスモールステップダウンし、パートタイマーでの勤務継続を導入した。タレント(能力、技術、経験、実績など)を発掘し、育成を継続した。

実施後の成果

Ⅰ.働き方・休み方改善_成果
1 労働時間管理 成果
年次有給休暇の取得率が上がっている
成果の出た対象 ☐医師,☐コメディカル,☑看護職
成果に影響を与えた取り組み 【取組(2)】 【取組(3)】
成果指標 平成24年度 52.6%
平成25年度 55.4%
平成26年度 65.8%
平成27年度 84.2%
平成28年度 53.6%
Ⅰ.働き方・休み方改善_成果
2 勤務負担軽減 成果
事務職員を育成し、外来診療の補助や外来フロアマネジメント、病棟環境整備などの業務を行っている。
成果の出た対象 ☑医師,☑コメディカル,☑看護職
成果に影響を与えた取り組み 【取組(5)】
成果指標 外来診療補助者2名、外来フロアマネジャー2名、病棟環境整備業務者2名を育成し、医師、看護師および看護補助者の業務サポートにつながった。
Ⅲ.働きやすさ確保のための環境整備_成果
4 人材の定着化 成果
退職者数(定年退職者を除く)が減っている
成果の出た対象 ☐医師,☐コメディカル,☑看護職
成果に影響を与えた取り組み 【取組(1)】 【取組(2)】 【取組(3)】 【取組(4)】 【取組(5)】
成果指標 常勤看護職員の退職者数と離職率
平成25年度 4名  12.9%
平成26年度 8名 23.7%
平成27年度 6名 18.5%
平成28年度 7名 25.5%
平成29年度 4名 14.8%(予定)
Ⅳ.働きがいの向上_成果
1 キャリア形成支援 成果
組織が期待するような職員のキャリア形成(職員の業務遂行能力の向上、期待どおり又は期待以上の能力の発揮等)が実現されている
成果の出た対象 ☐医師,☐コメディカル,☑看護職
成果に影響を与えた取り組み 【取組(4)】 【取組(5)】
成果指標 クリニカルラダーレベルアップ者(9月と3月に認定)
平成25年度 1名
平成26年度 8名
平成27年度 12名
平成28年度 6名
平成29年度 5名(9月の認定者)

これまでの取り組み成果に対する院内の声・反応

 ライフスタイルに合わせ、勤務形態をスモールステップアップ・ダウンさせることで働き続けられている。平成30年度に入ってからは、離職率が0%で推移している。
 また、マネジャーが中心となってスタッフのタレントを発掘して光り輝くステージを用意することで、全員一つ以上新たな課題にチャレンジし成長している。
 最近では、看護部マネジャーに留まらず、スタッフや多部署のマネジャーなどからもタレント発掘のアイデアをもらえるようになった。
 タレントマネジメントが職員間でも行われはじめ、定着しつつある。

今後の課題等について

 タレントマネジメントという人材マネジメント施策を拡げ、当たり前の組織風土になるまで醸成することで、楽しく働き続けられる職員を増やし、組織を活性化させる。
 人材育成と組織活性化に取り組めるマネジャーの育成が急務。
 働き方のステップアップにチャレンジするスタッフ、キャリアアップするスタッフの評価と報酬を連動させることが課題。

取り組み・提案者概要

取組者
法人全体の取組
法人名
医療法人 和昌会
病院名
貞本病院
法人(病院)の開設主体
医療法人
所在地
愛媛県松山市竹原町1丁目6-1
主たる医療機能の特徴
急性期機能
一般病床
病床数: 50
 
入院基本料:13対1
療養病床
病床数:
 
入院基本料:
結核病床
病床数:
 
入院基本料:
精神病床
病床数:
 
入院基本料:
その他病床
病床名:地域包括ケア病床
 
病床数:10
 
入院基本料:13対1
一日あたりの平均外来患者数
196.9人(平成28年度数値)
一日あたりの平均在院患者数
51.4人(平成28年度数値)
一般病棟の平均在院日数
23.1日(平成28年度数値)
病床稼働率
87%(平成28年度数値)
職員総数
169人(平成28年度数値)
医師
10人
看護職
38人
医師事務作業補助者
0人
看護補助者
16人
医師の交代制勤務の有無
なし
看護師の交代勤務の状況
3交代制と2交代のミックス(同一病棟内)
勤務環境改善についての表彰・認定等について
平成28年5月25日、公益社団法人日本看護協会より、看護職のワーク・ライフ・バランス推進カンゴサウルス賞を受賞