取り組んだ内容

【取組(1)】
Ⅲ.働きやすさ確保のための環境整備
2 職員のいじめ・ハラスメント等対策
患者等からの暴言・暴力への対策に関する体制を整備している(警備員の配置、相談窓口の整備等)
【取組(2)】
Ⅲ.働きやすさ確保のための環境整備
2 職員のいじめ・ハラスメント等対策
職員へのいじめ・ハラスメント対策や患者等からの暴言・暴力への対策に関する研修や、当該研修への職員参加の支援を行っている

取り組みのきっかけ、背景、取り組み前の問題点

当院はがん専門病院であり、医療に対する患者や家族の期待値も高く、医療関係者と患者・家族との齟齬が発生しやすい環境である。近年、患者や家族からの苦情や暴言が増加し、相談部門にて対応していたが、窓口で対応する職員が大変苦慮し疲弊している状況があった。組織全体で患者や家族からの苦情や暴言に対応する仕組みがなかったため、がん相談員や各部署、事務職員などでその都度、初期対応を行っていた。患者家族からのクレームは、職員や職種間の人間関係などにも影響していると感じていた。

取り組み対象

  • 取り組み対象
    医師,コメディカル,看護職
  • 取り組みの中心部署・人物
    患者支援センター
    医療メディエーター
    医療安全管理者
  • 取り組み詳細
    医療者と患者家族間の対話推進を目的とし、平成27年4月より県立病院機構5病院に医療メディエーターが配置され、当院では、医療メディエーターを専従配置とした。まずは職員に医療メディエーターの役割を理解してもらう取り組みを行った。医療メディエーターの役割は、医療者と患者・家族の対話推進であるが、病棟や部署ラウンドを行うなどで、気になる情報を早めに収集したり、相談しやすい環境を作るなど、コンフリクトになりうる事柄の早期発見に努めた(※1)。また、予防的な取り組みとして、相談や苦情に関わる職員が情報を共有するためのミーティングを開催していた。このミーティングが、月1回の「相談苦情対応検討会議」(※2)となり、院内で発生している事案の共有をしながら、対策を検討することにつながった。このように、継続的に患者・家族と医療者のコンフリクト案件に介入していったところ、まずは医師からの相談や介入依頼が増えるようになったとともに、苦情になる前から事前相談として相談をする医療職が増えてきた。

    (※1)医療メディエーターの立ち位置
    組織では、病院長の指示のもと組織横断的に活動をしている。医療メディエーターは、医療職と患者の中立的な立場を保ち、患者と医療職双方の意見を聴きつつ対応している。また、通常は、各部署からの相談に対応しているどのような相談でも何でも引き受けるのではなく、基本は各部署で初期対応をしたうえで、第三者が介入したほうがよいというような事例には介入するようにしている。

    (※2)「相談苦情対応検討会議」が設立した経緯
    会議体として設立する前段階として、苦情の実態を把握するため、まずは派遣職員も含めインシデントレポートシステムにある「暴言暴力・クレーム報告」を活用し報告を促した。さらに、月1回患者・家族相談に関わる職員からの対応困難事例について「相談・苦情ミーティング」を開催し、情報共有と対応策の検討をおこなった結果、患者家族からのクレームだけでなく職員間の苦情やハラスメントなど多様な報告がされるようになった。このミーティングをさらに組織として問題解決ができるように平成30年12月から「相談・苦情対応検討会議」として正式に院内会議として位置づけた。この会議では、苦情に対する対応フローを作成し、報告内容に対し、緊急的な対応か否か、部署や会議での検討かなど、対応の方向性を決定し、管理者会議で報告している。

実施後の成果

Ⅲ.働きやすさ確保のための環境整備_成果
2 職員のいじめ・ハラスメント等対策 成果
職員へのいじめ・ハラスメント、患者等からの暴言・暴力に関するトラブルの件数が減っている
成果の出た対象 ☑医師,☑コメディカル,☑看護職
成果に影響を与えた取り組み 【取組(1)】 【取組(2)】
成果指標 ・医療職全体(特に医師)の精神的負担の軽減
・苦情解決件数の増加
・クレームやハラスメントの早期対応解決(期間の短縮)
・クレームやハラスメントの問題が大きくなることへの予防
・医療メディエーターが介入してからは、訴訟案件がゼロ

これまでの取り組み成果に対する院内の声・反応

①相談苦情対応検討会儀の設立の効果・院内の反応
まず、院内の苦情に対する解決方法が明確になった。
また、相談に関わる部署の職員は、問題を抱えやすく疲弊もしやすいが、ひとつの部署で解決するのではなく、組織・チームとして対応するということが明確になり負担感が軽減した。
ほかにも、院内全体で取り組みを進めることにより、医療安全管理者や相談部門、看護局や医療局、事務部門と、相談・苦情案件に対する情報共有がしやすくなった。

②医療メディエーター導入の効果・院内の反応
患者・家族と医療職の関係が悪化しそうな事例や医療事故の案件に医療メディエーターが積極的に介入することにより、主に医師から介入要請が増加した。最近では、早期に医師や看護師から介入依頼が来るようになっており、医師や看護師の精神的負担軽減につながっているだけでなく、医師の精神的負担軽減ができたことで、以前であれば医師の精神的負担のストレスが医師と密接に関わる看護師等の医療職にも影響していたところ、そのようなケースが減り、その他医療職の精神的負担減少につながっている。
さらに、医療メディエーターが職員同士の対立についてもどちらにも偏らず第三者的な立場で話を聴き双方が解決策を見いだせるような場作りをしている。医療メディエーター導入時の職員への周知において最も効果的だったのは、導入初期の段階で、上席医師からの依頼がきっかけとなり、その体験を通して後輩医師へ伝わり、他の医師や看護師等に広まったことにあると考えている。特に医師は、患者の相談・苦情においては1人ですべてを対応する、しなければならないと考える方が多く、その負担を少しでも軽減するため院内で情報共有し、上記の「相談苦情対応検討会儀」等を利用しながらチームで対応していく、という利点が、立場のある医師自身の声として広められ、メディエーターの存在が認識されていったように思う。

今後の課題等について

月1回の会議では、タイムリーでない場合もあるため、「暴言暴力・クレーム報告」に関しては、「相談・苦情対応検討会議」の担当メンバーが報告内容をタイムリーに閲覧できる体制をとることにした。
さらに次年度は、「患者医療対話推進室」を設置し、組織的に暴言・暴力やコンフリクト事案等に対応できるようにすることを検討している。
また、相談・苦情対応においては医療メディエーターが関与すればよいということでなく、医療職自身が、患者とのコミュニケーションスキルを高め、相談・苦情対応を円滑に対応していくことも重要である。このため、神奈川県立病院機構では、毎年医療職を含む中堅管理職以上の職員に対して2日間の医療メディエーション基礎研修を実施している。この研修を通して日常業務においてメディエーターマインドを持った対応ができる職員育成を継続しておこなっていきたい。

取り組み・提案者概要

取組者
病院単体での取組
法人名
地方独立行政法人神奈川県立病院機構
病院名
神奈川県立がんセンター
法人(病院)の開設主体
地方公共団体等(都道府県、市町村、地方独立行政法人)
所在地
神奈川県横浜市旭区中尾2-3-2
主たる医療機能の特徴
急性期機能
一般病床
病床数: 395
 
入院基本料:7対1
療養病床
病床数:
 
入院基本料:
結核病床
病床数:
 
入院基本料:
精神病床
病床数:
 
入院基本料:
その他病床
病床名:緩和ケア病床
 
病床数:20
 
入院基本料:
一日あたりの平均外来患者数
984.85人(平成29年度数値)
一日あたりの平均在院患者数
344.08人(平成29年度数値)
一般病棟の平均在院日数
11.4日(平成29年度数値)
病床稼働率
82.9%(平成29年度数値)
職員総数
736人(平成29年度数値)
医師
125人
看護職
423人
医師事務作業補助者
10人
看護補助者
44人
医師の交代制勤務の有無
なし
看護師の交代勤務の状況
3交代制(変則含),2交代制(変則含)
勤務環境改善についての表彰・認定等について
なし