医療機関インタビュー

聖隷三方原病院 ~女性職員の勤務環境改善~

副院長 片桐 伯真氏
総看護部長 松下 君代氏

所在地 静岡県浜松市
病床数 934床
主たる医療機能 高度急性期機能
職員数 1,687人(医師182人、看護師734人、看護補助者88人)

インタビュー記事


(左)総看護部長 松下 君代氏
(右)副院長 片桐 伯真氏

聖隷三方原病院は浜松市の北西部に位置し、浜松市の北西部中核病院として地域医療を支えている。そのような病院で行われた女性職員の勤務環境改善の取組みについてキーマンである片桐副院長、松下総看護部長に話を聞いた。

-女性医師の勤務環境改善に取り組み始めたきっかけを教えてください

片桐 女性医師は人材として必要な存在であり、女性ならではのケアも含めて、働き方改革に関わってくる。これまでも女性医師を尊重する風土はあったが、働き方という意味でポイントになるのは、結婚後の出産・育児の前後含めてどのようにケアし対応できるのかということになるだろう。

-取組みの流れを教えてください

○出産・育児のケアについて

片桐 結婚後の出産育児を積極的に受け入れつつ、復職した後も子供の状況に応じて時短や休みを取りやすい環境作りなど、多様な勤務形態について積極的に取り組んでいる。
医局派遣などの絡みもあり、診療科の違いによって融通がきかないという場合もあるが、女性医師が転勤してきてここで結婚出産されてもできる限り定着していただきたいので、大学にお願いして育児休暇をしっかり取れるようにするなど、継続して働いてもらえるように積極的に対応している。

○離職防止について

片桐 今現在、医師のうち183名のうち39名が女性医師である。研修で若い先生も半分くらい来ており、中にはそのまま定着していただいている方もいる。ちなみに女性医師の占める割合は全国平均では17%で、当院は約22%なので比較的多い。
制度面においては、国の制度と聖隷福祉事業団(以下、事業団)の制度だけではカバーできない部分もあるので、病院長と医師とで面談しながら、働き続けるために必要なものは何か、制度なのか、時間なのか、内容なのか、などを確認しながら個別に対応している。
女性医師の場合、必ずしも地域の出身でなく頼れる人が周りにいないといった場合も多いので、院内保育園で規定はあっても融通をきかせるなど、柔軟に対応できるようにしている。中には子供の成長に合わせて、雇用形態や働く時間など働き方を変えながら10年くらい働き続けてきた方もいる。医師の立場からすると、当院の働きがいは何かというと、自由度が高いというところが大きいと感じている。

-看護職の取組みについても教えてください

○ワークライフバランスについて

松下 ワークライフバランスの実現に向けた取組みとしては施設基準を守り、有給取得や超過勤務状況の確認、多種の制度利用などの推進など、看護部だけの努力でなく、総務課を中心に多数の協力を得ている。ポイントは、キャリアを支援するために勤務環境を整えることが重要であるという考えである。

○離職防止について

松下 事業団の制度としてワークシェア制度があり、1日6.5時間か4.5時間という短時間勤務、あるいは週3日か4日という短日勤務、1日の時間を短くするか勤務日数を少なくするかどちらかを選ぶことが出来る。育児短時間制度は3歳になるまでだが、事業団のワークシェア制度を使えば就学前まで使え、夜勤数も配慮されているので、活用している人が非常に多い。これにより子供の送迎など子供の事情で辞めるという事は随分少なくなってきている。
また、妊娠してから、将来どういう風に働いていきたいかということを、休みに入る前、出産後、復帰する前、復帰後の最低4回は一人ひとり面接をするようにしている。育児を語ろう会や育児セミナーなど、先輩のママさんナースが中心になったサポート企画などもある。小学校に入るまでママさんナースが3~4年担当して、次の人に渡していくというスタイルで続いている。

○超過勤務対策について

松下 何年か前から始業前超勤を止めることを徹底してきた。それまでは、平均30分前に出勤してきており、情報収集したり物品の準備をしたりしていた。30分早く出勤しても30分早く退勤する訳ではないので、始業前超勤を止めることで月に10時間くらいの超過勤務を削減することにつながったと思う。その分、各職場で申し送りの時間を15~30分後ろにずらし、情報収集や準備の時間をつくるなどの業務改善をした。通常業務以外のカンファレンスや委員会参加なども可能な限り通常勤務時間内に合わせる、あるいはそれに近い状態にしないと超過勤務になってしまう。今年から院内にある25の委員会の内、14の委員会の開始時間を早め、2~3の委員会は毎月を隔月にするなど開催回数を減らす、あるいは30分以内など時間を決めるといった努力をしてきた。今のところ、それらの取組みによって大きなトラブルは起きていない。

-看護師のキャリアアップについても取り組まれていると伺いました

○キャリアアップについて

松下 看護師はクリニカルラダーという教育体系があり、3年程度で一人前になる教育を受けることが出来る。当院では人材育成を3本柱で行っており、どの領域でも幅広く一通りの業務ができるジェネラリスト、ある領域を決めてキャリアを伸ばしていく為に専門・認定看護師を取得したスペシャリスト、もう1つはマネージャーがある。ジェネラリストでやっていきたいのか、スペシャリストになるか、マネージャーになるか、それぞれ本人たちの希望を聞きながら支援していく形になる。そのために入職した時から職場長による目標参画面談や、事業団で実施している自己申告書を活用している。自己申告書には現在の仕事に満足しているかを、質・量の両面から確認したり、次年度以降の長期的なキャリア計画を確認したりしている。例えば、内科から外科に異動したいとか、救急医療から在宅医療に変わりたいといった要望まで記載している。また、あえて仕事の負荷をかける=大きい仕事をやってもらうというのも大事だと思っている。ああしなさい、こうしなさいと指示するのではなく、自分で考え提案し、行動出来るチャンスがある体制を構築することで、自己実現や後輩の憧れるモデルになるので若い人たちのキャリア支援にもつながると思う。

○専門認定について

松下 専門・認定看護師は現在19分野27名が活躍している。その内、救急・嚥下・褥瘡・脳卒中など9分野で認定看護師による教育講座を実施してくれている。年6回コースで受験資格があって審査・認定され、3年ごとの更新制度もある。専門認定看護師の育成には力を入れているし、確実に医療・看護の質底上げしてくれている。

-今後の課題を教えてください

○医師の確保

片桐 地方の病院なので、やはり医師をどうやって確保するかというのが最も大きな課題になる。新専門医制度もあって今までとは事情が異なってきており、自前で医師を養成するということが必要になっている。ドクターヘリを導入して高度救急医療センターの機能を果たしていることなど、病院の魅力をPRし、当院を選んでもらえるメリットを感じられるような取り組みも必要になってくる。

○外来診察の看護師について

松下 特定領域のベッドが多く、施設基準を遵守する必要があるので、どうしても人員配置においては入院病棟を先に考えてしまい、外来看護師の適正配置が後回しになっていたと感じている。そんな中、入院の短期化や侵襲の大きい日帰り検査や手術が進み、業務は外来にどんどん移行しているのにも関わらず、人員配置が追いついていなかった現状があり、外来領域に勤務超過が多くなっていた。外来はアルバイトや時間制限のある人も多いので、正職の看護師に過度の負担がかかっていたということも分かってきた。どのくらいの人数を割くべきかの判断基準を作らなければならないし、病棟から外来へ人材をシフトするようなことも数年かけて取り組む必要があると考えている。

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